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新皮質と LLM の関連性

リチャード・ドーキンスの『利己的な遺伝子』にある「人間は遺伝子の乗り物である」という考え方により、鬱になったり自殺が相次いだという話をなにかの本の冒頭で読んだ。確かに衝撃的な考え方だけれど、当時の自分はふーんと思うぐらいだった。が、最近はどこか身に染みる思いである。

『脳は世界をどう見ているのか』という本によれば、脳の新皮質では、知識や経験を座標系として学習し、それをもとに世界を予測することで思考しているという。これは大規模言語モデル(LLM)の仕組みと似ている。LLM は大量の単語や単語間の関係を学習し、それをもとに次の単語を予測している。

巷で話題の LLM が、人間の思考の滑らかさのようなものを獲得していくのを見るに、結局我々は生物機械でしかないような印象を受ける。遺伝子に乗り捨てられていることが科学で説明され、さらに複雑さの極みと考えられていた思考が技術によって模倣されている。

だからどこか、もやる気持ちが確かにある。科学技術によって世界が詳らかにされていく快感がある一方、複雑さというブラックボックスで守られていた人間の尊厳のようなものが失われていく。

さらにこの文章をネットにたれながすことで新皮質と LLM の関連性が評価されて、これもいずれ学習データとして取り込まれていくだろうし、自分が読書を通して異なる物事をつなげて楽しむ遊びは LLM によってすでに高度に行われていることに虚しさを覚える。

脳は世界をどう見ているのか 知能の謎を解く「1000 の脳」理論