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度々、旅を旅する

旅行に行くといつも別のことを考えている。北アルプスを歩いているはずなのに「ここの植生は北海道のあそこに似ててあの落葉樹をシラカバにすればそのまんまだな」と回路が繋がれば、北海道を旅した 4 年前の旅程を想起している。そうそう、あの時は雪が音もなく降る林道を行って…というように、初めて見る風景に、過去の風景をだぶらせて、その土地と、別の土地のふたつを旅している。思考の深度が増せば、その時に考えていたことさえ思い出せる。自分にとって、旅先で写真を撮る行為よりも優先したいのは、目の前に広がっている風景を過去の記憶で補強して、将来あるきっかけで容易に思い出せるようにすることだ。もちろん、写真を撮ればそれを元に思い出せるし、細部の再現度なんて目ではないし、他人に共有する時に便利なんだけれど、自分の肌には合わなかった(自分が写真を撮る動機は、家族にここ行ったよという分かりやすいアピールのためだったり、ブログでなるべくフリー素材を使いたくないというのが挙げられる)。一眼レフカメラを持っていたけれど、どうも風景を構図的に捉えてしまい、写真では抜け落ちる類のもの(五感マイナス視覚)を味わう余裕がなくなっていた。それが忙しないなと感じてしまった。今見ている風景に過去の風景を照らし合わせながら記憶の引き出しを増やしていくと、簡単に暇潰しができてとても良い。だいたい人と話している時に意識が飛びがちなのは、手元の景色から過去の風景やその時の行動にフォーカスするのが楽しくて、戻ってこれないことが原因なのかもしれない。