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三大欲求に並ぶ快楽はサウナだ。湯らっくすのアウフグース体験記

湯らっくすのサウナ、ひな壇の右奥。それは一言で言うと地獄(褒め言葉)である。アウフグースで水を掛けるサウナストーンから見て、一番近く、一番高い位置にあり、その上、熱波が加わるとあれば。

湯らっくすのアウフグースは、2 部構成。その日使用するアロマの解説を入れながら、適度に熱波を撹拌する 1 回目。そして、地獄の 2 回目。都合、4, 5 回程度、サウナストーンにアロマ水が掛けられると、大量の水蒸気とヤバイ気配があたりを漂う。

熱波師によって水蒸気が撹拌され、熱波がひな壇の上に届く頃には、無意識のうちに行っていることを見直さなければならぬ。まず、呼吸である。熱波が到来しているときは、まともに息を吸えないため、熱波の間隙を縫って口内に貯めた比較的冷えた空気を呼吸に用いる。また、皮膚に張り付く熱は、肌にピリピリとした刺激をもたらす。サウナの妖精がちくちくと鍼治療をしているかのようだ。たまらず、無意識のうちに汗を手で拭うも、汗の上のほうの熱された水分を皮膚にさらに塗り込んでしまい、冷えるどころか逆効果という始末。拭いたいけれど、拭えない。「熱いなら拭う」という日常では当たり前の行為ができず、ただ耐える。

だが、熱波に耐えられず、たまらず最上段から一段下のスペースに正座で滑り込む。一段下がるだけで大人しくなる。少し落ち着くと再び最上段に上がり、熱波を浴びる。多くのおっさんが脱落していくなか、熱波を送り続ける熱波師。一番熱いのは彼であろう。最後に、一人ごとに 3 回熱波を頂いて、拍手して終了。そして、水牛のように背中に汗をびっしりと浮かべたおっさんの群れは天国に向かう。サウナの後には約束された天国がある。水風呂だ。

水風呂は「最深部は 171cm」で「飲める天然水」が「オーバーフロー」だ。汗を流し、ざぷんと頭から水に浸かるのがここでの常識である(もちろん、サウナに入る前に洗髪を済ませておく)。まさしく砂漠をさまよった旅人がオアシスに飛び込む気分だ。ふにゃ〜という声がもれ、水風呂の縁に手を組んで頭を載せ、ぼんやりとする頭で遠くにあるテレビを眺める。拡大していた血管が収縮し、心の臓の鼓動が轟く。やがてそれが落ち着く頃には、体温によって編まれたベールが体を包み込み、水風呂に対する耐性を獲得している。テレビを眺めているうちに、10 分経っており、ぶるぶる震えながら水風呂を飛び出す。そして次のステージである外気浴に移るのだ。

湯らっくすの外気浴スペースは、半室内というのか、外とシームレスに繋がっている。鳥肌は立っているが、まだ、サウナの熱が体内に蓄えられている。その熱と、肌を撫でる外気が蒸発を加速する。皮膚から水気がなくなるにつれ、ふわふわとしたなんとも言えない心地よさと多幸感に包まれる。

この合法的に血流をコントロールする麻薬から逃れられる気がしない。この快感はもはや三大欲求に並ぶ、快楽として認識されてしまっている。地獄を求め天国へと至る。その繰り返しで得られる快楽が、サウナの楽しみである。