夢の中の大冒険 2019
夢の中では誰だって冒険小説家だ。ハリウッド映画のチープな冒険活劇のように、ストーリー展開に脈絡がなくても、野次を飛ばす観客がいないから、謎を燃料に目覚めるまで描かれる一晩の物語。この一年、起床した後も覚えている物語を Scrapbox に記録していたのでここにまとめる。
2019/01/24
東京に帰省先から新幹線で戻る。途中駅の「牛酔」みたいな地名で降りる。東京までまだまだ遠いが、スマホのガイドによるとこっちのほうが安かったのだ。ただのターミナル駅らしく、電車やバスの往来以外は特に産業がなさそうに見える。バスのターミナルと、自家用車の駐車場が合体したような施設から、田園都市線行きの寂れたバスに乗り込む。起床。
2019/02/11
学園モノのゲームのようだった。土砂吸着の性質を持つ板を用いて、水質改善や地下採掘に役立つ発明をした先生の授業を受けた。その授業では業界の有名人が参加していて、実際にその発明を用いた機械の実演があった。授業の終盤で先生が、機械を意図的に暴走させる。実はその先生が業界の有名人を事故に見せかけて殺害することを見抜いたぼくは、なんとか懐に隠した拳銃で機械の暴走を抑えることに成功した。が、その先生を取り逃がしてしまい、悪夢の学園生活が始まる。その学園生活では、何故か教室が球場の外野席で、5 人程度の男女とチームを組んでいた。学園もののゲームよろしく最初は平和な日常パートを過ごしていたが、段々雲行きが怪しくなる。例えば、夜の日課としてランニングをしているぼくは、そのチームメイトと一緒に透明な湖の周りを走っていた。何故かランニング中にその男の子に騙され、またもや懐に隠していた拳銃で対抗する自分だったが、取り逃がしてしまって即バッドエンド。次の週では、その男の子を見事に策略にはめ、仲間と思われる 2 人を銃殺したが、無関係の人間を殺害してしまいバッドエンド。また、そこでは、食べ物に毒を入れることなんてザラに起こり、警戒して冷凍食品ばかり食すが、冷たいもので腹を下してバッドエンド。起床。
2019/02/15
ガラス張りのモールの管理人をしていた。そこに大きな黒い獣が迷い込んだ次の日の夜、気の狂った高貴な人が現れてイカスミパスタを嘔吐した。従者のような人がそれを掃除しているのをただ眺めている。暗転。整形外科に通い、なぜかその整形外科の支部に行く必要があり、バスに乗って行く。停留所では止まらず走り続けるバスから飛び降り、整形外科の支部に辿り着く。上の階にある整形外科へのエレベーターはなく、紐に捕まって昇降する乗り物に乗る。途中で落ちそうになるが、落ちることはなかった。起床。
2019/03/04
地下で生活することになる。明りとりのために、太陽の軌道に合わせた洞穴が掘られ、鏡の反射により適切な光を運ぶ機構が作られている。地下にあるガラス張りに作られた教室の前でぼくは吐露を始めるのだった。「ぼくには情熱がない」。起床。
2019/04/05
なぜか自分の部屋がぐらぐらする。よく観察してみると端に行くと傾きが大きくなるようだ。建物全体が傾いているのか確認するために(何故かぼくの夢では建物が傾くことが多い)、お得意の飛行術で建物の周りを滑空してみるが、どうも問題はなさそうである。ぐるりと自分の部屋に戻って、部屋の端を掘り起こしてみると、フローリングは実はただの板で部屋の重心のあるボールに乗っており、それでぐらぐらしていたことがわかる。ほこりを取り、部屋の重心バランスを見直し、ボールの代わりに、安定するものを設置し、ぐらぐらの家とはおさらばした。起床。
2019/06/28
なにかの焦燥感に駆られてぼくは東に向かっていた。夢のなかのぼくが使える飛行術でその丘(頂上に洞窟がたくさんありホームレスがたむろしている)を超えることも考えたけれど、あまり目立ちたくないし、なにより雲の動きが怪しい。地面を低く這うように加速し、丘を越えて海に出た。写真を撮りたくなるような景色だった。左には長い間放置された遊園地の洞窟アトラクションがあり(従業員用避難口がある)、右にはタイドプールが広がっている。そこには多くの遊泳者がいた。タイドプールに怪しげな雲と、夕日が映って奇妙な不安感が広がる。そう、嵐が来るのだ。
嵐は急に来た。遊泳者が蜘蛛の子を散らすように逃げる。ぼくは取り残された遊泳者の女の子を抱え、従業員用避難口に飛び込んだ。大きな波と、強い風が押し寄せてくる。立て付けが悪くうまく閉まらなかったが、避難階段を登り、とりあえず高度を稼ぐ。その頃には、その少女に当事者意識が芽生え、階段を自分で登っている。とりあえず階段の一番上に辿り着いて、ふたてに別れて錆びついた脱出口を確認する。脱出口は、外からは意識しにくいようにカモフラージュされており(アトラクションの景観を乱さないようにだろう)、多くの避難民が慌てて逃げているさまを確認できた。このまま外に出ても混乱するため、冷えた体を寄せ合うようにぼくたちは眠り、次の日の朝を迎える。
朝になり、混乱がある程度収まったのを確認すると、ぼくたちは外に出た。警察の避難誘導や炊き出しが開始されており、ぼくたちもそれに混ざる。水死体がそこらに流されていたため、少女の目を慌ててふさぐ。起床。
2019/07/23
岩盤の上にできた街を車窓から眺めていた。広い川幅の川の中から、平べったい岩盤が斜めに生えていた。その僅かな陸地を使って、そこに街が建てられている。街が岩の上に載せられた様がどこか美しく、ぼくの心を打った。起床。
2019/08/21
かつて栄華を極めたその都市の街道には、超巨大な彫刻群が並んでいて、まるで巨人の墓場のようだった。体操座りをしている格好のそれはだいたい 3m ぐらいの高さがある。それが柱となって、道を行く人々を見張っているように見えた。その街道には今、多くの部隊が展開されている。武装した指揮官 1 名、軽装な百人の戦士で構成されている部隊が多数。彼らに見つからないように彫刻群の間を抜けながら、敗残兵のぼくは、都市に向けて帰還するところだった。古代文明からは、貴金属が掘り出され、その富の多くは都市の富裕層が所有している。彼らの既得権益を守るために戦ったけれど、この有様である。起床。
2019/08/25
ロシアの地質調査に向かうため、小型飛行機に乗った。長いフライトだったが、そろそろ終わりが近付いている。だが、大変なのはここからだ。ちゃんとベルトを締めるようにと、案内が流れる。また、乗務員が一人ひとりに対して個別の注意を促していく。目的地の都市は奥まった谷のようにところにある。不便なところにあるが、それゆえ要塞の役割を果たし、都市として発展した歴史がある。しばらくした後、飛行機が傾き始める。そこから、ナイフエッジの体勢になる。上空には不安定な気流が流れていて、谷を通過出来ないため、谷間を抜けるしかない。まさに自然の要塞。腹筋に力を入れて耐える自分だったが、窓から見えた光景に思わず目を奪われる。谷には、虹の原色そのままの岩が生えている。かなりの速度で移動しているはずだが、その岩が大きいことを認められた。そうこうしているうちに、都市に到着する。緩やかにカーブして登る道の多い街だった。目線を遠くにやると、険しい谷と空のコントラストが眩しい。谷の麓には、城を思わせる立派な建物があり、それが駅のようだった。先程の谷が調査の目的地だが、地下鉄で移動する必要がある。要塞として使われていた時代の、地下道が近代では地下鉄として役立っている。暗転。空を飛べるぼくは鉄塔を訪れていた。鉄塔のてっぺんには、発泡スチロールの容器が置かれており、ピンク色の花を咲かせる植物で満たされている。そのピンク色の被写体の後ろに、また同じ植物が背景として地表に存在していて、思わずカメラを構えてしまった。起床。
2019/08/26
びしゃびしゃびしゃと飛行機が水をはねながら着陸する。温暖化によって南極やなんかの氷が溶けてから、北海道は水に沈む都市になった。都市計画に水との調和が掲げられ、水を含んでも壊れない電車や、車が開発され実際に使われている。例えば、電車の車両なんかは、水没しても問題ないし、なんなら日によっては水ごと運んでしまう日もある。北海道の住民はそれぞれ愛用の長靴を履いているからへっちゃらだ。新しい都市計画後に建てられた建物は、太いパイプが這っている巨大構造物となっているため、ひと目で分かる。太いパイプが水と暮らすために大きな役割を担っているらしいが、寡聞にしてぼくは知らない。起床。
2019/09/04
くるぶしほどの深さの川を歩いていた。自動車もどういう原理か川の中をぞろぞろと徐行していて、上流に向かっている。上流に行くほど、ごろごろした岩が転がっているはずだけれど、その川は綺麗にメンテナンスされ、車の走りに支障はない。目的地には、顔岩があり、そこで年に一回の儀式が行われるのであった。起床。
2019/09/29
夢の中限定の香港がある。空港に降り立ったら、市街への直通の、それも一直線のレールが引かれた地下鉄に乗る。その地下鉄は市街に入ると多少は曲線を描くが、基本的には、一直線の、それこそエネルギー効率の良い線路を描いている。空港に降り立ったぼくたち(そう珍しく 4 人組の夢である)は、一枚の交通系カードを購入し、それを 4 人分で乗車しているはずだったが、市街の降りる駅で何故か不正乗車と見做されてしまう。警察官が来たため、反射的に逃げるぼくたちだったが、駅構内の倉庫のようなところに逃げ込んでなんとか窮地を脱する。起床。
2019/10/09
長い下り道をバイクで降りていた。途中、左手に廃屋があったことを覚えている。下り坂が終わると、真正面にはとてもきれいな湖があり、それを右手に見ながら緩やかにカーブする。しばらく、湖を見ながら安全運転を行っていたのだが、いきなり現れた R の大きい急カーブを曲がり切れず、湖に転落してしまう。転落した直後に、イカれたエンジンを修理に出す費用と、新しく新品を買う費用を検討した自分が生々しい。湖は結構深かったが、沈んだバイクを陸地に上げることには成功し、難なきを得る。起床。
2019/10/28
縦長の旅館に泊まっていた。階段があなぬけだったり、階段の踊り場で給仕されたりと、なかなか変な旅館だった。大浴場は男湯と女湯で観葉植物で区切られているだけであり、ほとんど混浴だった。起床。
2019/11/12
モノレールを最終まで乗り継ぐと長細い町にたどり着いた。電車に同乗していた女の子は、駅から出た後、右上の道を通って家に帰っていった。その町は、積雪と高低差が印象的な町並みをしていた。その日は秋晴れという言葉がふさわしく、既に刈り取られた田んぼと、右上の高台にホームレスが布団を干している風景をくっきり映していた。雪がよく降る環境だから地下道がとても発達していた。地下道に入ると 600 円で入れる温泉施設があった。地下道に設置されたロッカーの近くで若い女の子がブラジャー姿になっていてちょっとドッキリする。地下道を行くとセブンイレブンとファミリーマートが合体した店があった。レジにはセブンの定員が一人しかおらず、ファミリーマートに並んでいた客にそのポテトチップスをセブンイレブンとして会計すれば、すぐにレジが進みますと解説していた。地上に出ると、ココイチと漫画喫茶があり、そこそこ栄えている町だということが分かる。起床。