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どうにかして脳の神経伝達物質を御したい

鬱病は脳の神経伝達物質の不足が原因であり、精神的な弱さなどではなく、外傷のように物質的な不具合だとする見方が一般的である。裏返せば、投薬によりその伝達物質を調整すれば、脳の機能をある程度制御することができると言える。

例えば、サウナ浴(サウナと冷水浴を交互に繰り返すこと)は、体温をコントロールすることにより、伝達物質の発生を促し、さらに血流の増加による血中酸素濃度の向上が見込める。このふわふわしているような、脳内のごみが取り除かれたような、俗にいう「ととのう」状態は、そのような物理的な状態だと説明できるし、運動による「ゾーン体験」や、座禅による「瞑想」と親戚ぐらい近い状態なのではと自分は認識している。

実際に、それぞれ一度だけ体験したことがある。大学生の時分にランニングしていると、無限に走れるような高揚感を味わったことがある。その時の快感が忘れられず、ランニングを続けていたのだが、あの感覚にはちっとも近付けない落胆が大きく、走ることを諦めてしまった。また、瞑想も一度だけ虚無にハマり、気付くと 1, 2 時間経っていた体験をしたことがあるが、これも繰り返し味わうことができなかった。たまたま偶然が重なる再現性のない体験だったが、今でも強烈にあの感覚を欲している。

ととのうであれ、ゾーン体験であれ、呼び方は複数あると思うけれど、キーワードは脳内物質のコントロールだ。違法薬物はそれを強制的にコントロールできる。体験したことがないから個人的な経験から語れないが、傍目にはすべて満たされていそうな著名人が依存してしまうのを見るに、あの感覚に近いものを気軽に味わえるのだろう。

幻覚剤(LSD)も違法薬物にカテゴライズされているが、大麻同様に、近年見方が変わってきている。他の違法薬物は脳に後戻りできない Point of no return な損傷を与えるが、幻覚剤はそうではないし、精神的にも身体的にも依存性はないと言われている(むしろ利用するにつれ効果が薄くなる)。

LSD は自然界ではマジックマッシュルームなどに含まれており、脳内で神経伝達物質の働きを模倣することにより、幻覚を引き起こす。幻覚と聞くと悪いイメージが付きものだが、LSD の幻覚の働きは次のように説明される。

私たちは脳内の自分自身の声にあまりにも馴染んでおり、日々直面する出来事に対し、効率的な定型化した反応をしがちになっている。この状態のことを意識のデフォルトモードと呼び、幻覚剤を使用すると別の意識モードに切り替わる。

別の意識モードに切り替わると、脳内の使い古された神経伝達経路の代わりに、ほこりをかぶっているけれど違う可能性に満ちた経路を使うことができる。この際に、ある種の混乱を与えるデメリットはあるが、むしろ精神性や創造性に新しい影響を与え、鬱病や依存症などへの医学的利用も期待されている。ちなみに、この混乱に伴う直接の死者は報告されていない。

LSD がもたらすものは、ととのうや、ゾーンの感覚とは違う体験かもしれないが、これも脳の伝達経路で起こる出来事であり、凝り固まった日常を変えてくれる力強さを感じさせる。脳に損傷を与えることなく、子ども時代の世界の一つひとつの出来事に眩しさを覚える体験を味わうことができる。

残念なのは LSD は日本では違法であることだ。医療用大麻の議論も遅々として進まない日本ではあまり希望を持てないが、いつかは LSD を試してみて、ピカピカの神経伝達経路を味わいたい。

幻覚剤は役に立つのか幻覚剤は役に立つのか

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