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「奴隷のしつけ方」を読んだ

日本では奴隷と聞くと遠い存在に思えるけれど、古代ローマでは奴隷制が当たり前のように存在していて、またポルトガル・スペインの大航海時代には、日本人も奴隷として輸出されていたこともある。

江戸時代にキリスト教を禁止したのは、奴隷を正当化できるキリスト教を元に世界を征服するヨーロッパの思想を受けない目的もあった。江戸時代から 20 世紀の戦争まで、日本人は、日本人のひいてはアジア人の奴隷化を防ぐために戦ってきた。

さて、話を古代ローマに戻そう。奴隷と聞いてイメージするのは、主人に鞭打たれる奴隷の姿。確かに、古代ローマの時代には罰としての鞭打ちはあったが、サトゥルヌス祭というイベントでは主人が奴隷に食堂で給仕したり、ワインを振るまうことさえある。

そんな正月に読んだ「奴隷のしつけ方」は、奴隷をどのように運用していくかという筋を元に、奴隷(もしくは主人)の姿が生き生きと描かれている。奴隷側にも苦労はあるけれど、扱う側の主人にも苦労がある(買い方、活用法、罰し方、ガス抜きなど)。

主人から見ると奴隷はとても高価な買い物のため、むやみに罰したり、性的に搾取するなどして、ストレスで使い物にならない状態は避けたい。そのため、いかに奴隷が効率的に働ける環境を作るか、に念頭が置かれる。必要なカロリーを与え、不和を解消し、怠けず誠実に働いてもらい、主人を誇りに思わせ、殺されないようにする。

もちろん罰する際には鞭を使うことがあるが、主人が癇癪で極端な罰を与えないように(あるいは手を傷めないように)、鞭打ちの請負人を雇うこともあった。自分が好き勝手出来る奴隷を所有すると、否応なく本能を制御することを学ばせられるそうだ。

今年は「奴隷」から趣味の読書が始まった。奴隷は今の世界を理解する上での重要なファクターだ。学校教育では奴隷から目を背けていたけれど、この視点を持ってもう一度勉強し直すと、新しい面が見えてくる予感がしている。

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