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パンダ日記

人生で何度かパンダがいる動物園に行ったことはあるけれど、人だかりがあって、まじまじと見る機会がなかった。だいたい遠目にある白黒のそれが、もぞもぞと動いて、来場者が慌ただしくスマホを構えるのがパンダに対する印象だった。けれど、今年の GW にシンガポールで図らずもゆっくりとパンダを観察する機会があった。

シンガポールには内陸部の湖に沿うように、3 つの動物園が隣接している。普通の動物園、川がテーマの動物園、ナイトサファリ。川をテーマにした動物園(リバーサファリ)には「引き」があまりないのか、人気者のパンダが設置されていて、見事な塩梅を醸している。自分は居心地が良くて 3~4 時間ぐらい滞在してたけれど。

パンダは人気者らしく一番お金のかかった施設にいる。楕円球をスライスしたような施設に、人間が通れる高架が掛けられている。緩やかにアーチを描く天井はガラス張り(だったような気がする)。高架からは、高台にいるパンダが同じ目線に見える。普通の動物園のようなガラスによる仕切りがなく、5 メートルぐらいの距離からじっくり観察できる。山岳の気候を再現しているのか、クーラーが良く効いていて肌寒い。手摺りもひんやり。

目の前にはパンダがどっしりと座り、傍らには刈られた竹が積まれている。ポテトチップスの袋をあさるように、適当な一本を取り出すと、節の部分を力強く噛み切り、二本に分ける。節がなくなった竹を今度は逆の歯で甘噛みし、竹の表皮と白い幹の部分を分ける。熊手と口を器用に使って丁寧に皮を剥ぐ。後は、向かれて白くなった竹をゴミ収集車のようにばりぼりと貪る。

ばきっ、かしかし、しゃくっ。そのような咀嚼音が、肌寒く広い施設に響く。全く美味しそうじゃないのに(たぶん味はあまりしないと思うけれど)、とても美味しそうに食べるパンダを気付いたら 1 時間ぐらい眺めていた。自動車工場で働いて 10 年来の手捌きで竹を食らうパンダは、彼の定めた手順から逸脱することなく食事をこなす。

それを眺めながら、パンダに対して熱狂する人たちに共感するのではなく、生きるのが辛くなったらもう一度ここにパンダを見に来ようと思った。なんだか泣きたくなる日にも、あの動物園にいるパンダは、彼の定めた手続きどおりに竹を食べている。パンダを見たければシンガポールのリバーサファリに行こう。