仮想通貨のネットワーク維持に使われている仕組みを比べてみた。Proof of Work, Proof of Stake, Proof of Importance
ビットコインではそのシステムを維持するために、プルーフ・オブ・ワーク(PoW)という仕組みが使われています。今のところ、ビットコインは時価総額こそは一位ですが、ビットコインが採用している PoW は問題を抱えています。
それを解決するために、ビットコインの後に生まれた仮想通貨は異なった仕組みを備えています。この記事ではそれぞれの仕組みを紹介していきます。
プルーフ・オブ・ワーク, Proof of Work, PoW
ビットコインと、イーサリアムに採用されているのが、プルーフ・オブ・ワーク(PoW)です。PoW は、計算量重視の仕組みです。一定の計算量をかけることによって不正を抑制し、システムを維持します。また、そのときに、計算量を提供した人(マイナー)に、報酬を与えています。
ビットコインが生まれた頃は、個人の PC でもビットコインのシステムを維持し報酬を得ることはできましたが、今では、お金を持っている人や企業が高価な計算機を投下して、報酬をかっさらっているのが現状です。つまり、「富める者がより富む仕組み」になっています。
また、一定の計算量をかけるためには、膨大な電力が必要となります。電気を生むためには、化石燃料を消費する必要があるため、投下した化石燃料がそのままビットコインの値段につながっているような印象を受けます。
現に、ビットコインのマイニングがさかんな中国では、その消費される電力量の多さから、禁止されるような動きもでてきています。→ 中国四川省の電力会社、マイニング禁止指令か【フィスコ・ビットコインニュース】 | 市況 - 株探ニュース
仮想通貨は、その言葉だけを聞くと、実際に貨幣を発行しなければならないリアルマネーと比べると、環境負荷が低いように思えますが、ビットコインではその環境負荷が問題になっています。
プルーフ・オブ・ステーク, Proof of Stake, PoS
PoW を解決するために、考えられたのがプルーフ・オブ・ステーク(PoS)です。この PoS は、ピアコインという仮想通貨で最初に採用され、イーサリアムもこれを採用する動きがあります。
PoS は、コインの保有量重視の仕組みです。コインの持ち分によって、計算競争に勝てる確率が上がります(= 報酬を与えます)。PoW と比べて、消費電力が少ない、というのがメリットですが、これにも疑問が残ります。PoW の「富める者がより富む」構造から抜け出せてないからです。
その仮想通貨の初期にたくさんそのコインを搔き集めた人が、最初から最後までそのシステムで優位に立ち続けられます。また、その人がコインを溜め込むことによって、一般に貨幣が出回らなくなるかもしれません。
例えが悪いかもしれませんが、農民から税を徴収して溜め込む貴族の領主のようなシステムに見えます。これもあまりよいアイデアには見えません。
プルーフ・オブ・インポータンス, Proof of Importance, PoI
仮想通貨 NEM(ネム)が採用しているのは、プルーフ・オブ・インポータンス(PoI)です。PoI は、貢献度重視の仕組みです。PoS のコインの保有量の考えかたに加えて、取引をした額や、取引をした人を考慮に入れて報酬を与えています。
それによって、今まで見てきた PoW, PoS の「富める者がより富む」ではなく、より NEM ネットワークを使った人、NEM に貢献した人に報酬が与えられます。NEM は、New Economy Movement(新しい経済運動)の略で、平等な分散型プラットフォームを作る、というのが採用する仕組みから見えてきます。
NEM では、報酬を得る仕組みのことをハーベスティング(収穫)と呼んでいます。ビットコインのように膨大な計算量を投下する必要なく、個人用 PC で NEM のネットワークに参加することができます。
仕組みが優れているか優れていないか
プルーフ・オブ・ワーク(PoW)、プルーフ・オブ・ステーク(PoS)、プルーフ・オブ・インポータンス(PoI)では、それぞれ重視する指標が異なることが分かりました。
国家の発行する通貨と違って、仮想通貨はそれを維持するための仕組みがまるで違います。仮想通貨の短期的な値段は、知名度や熱狂によって決まると思っていますが、長期的な値段は、その仮想通貨が備える仕組みが優れているか優れていないかによって決まると思っています。
仮想通貨が、テクノロジーによって値段が変わる通貨なのだとしたら、その仮想通貨を買う前に、その仮想通貨の採用している仕組みを調べてみるのも良いかもしれませんね。