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何故、ビットコインは分裂するのか?まだまだ成長途中のシステムか、あるいは継ぎ接ぎだらけのシステムか?

bitcoin

仮想通貨(ビットコイン)の世界に出会うまで通貨が分裂する、という表現は聞いたことがありませんでした。そして、その世界に慣れ親しんだ今でも通貨が分裂するのは、不思議な表現だなと思います(法律的には仮想通貨は、通貨ではなくモノですが)。

最近では、ビットコインは、ビットコインと、ビットコインキャッシュに分裂しました。仮想通貨の分裂を促すものには、大きく分けてふたつの理由があります。

  1. 取引量の増加に対してシステムが対応できていない
  2. ブロックチェーンを維持するための計算量が多く、マイナーにとって魅力的ではない

取引量の増加に対してシステムが対応できていない

ビットコインは仮想通貨の中で一番古いため、そのシステムは他の仮想通貨と比べると古いと言わざるを得ません。特に、一定時間内にさばける取引量(TPS: Transaction Per Seconds)が、とても追いついておらず、いわゆる送金が詰まる問題がおきています。

その実感を得るために、現在の取引を chainFlyer で見てみましょう。

取引(トランザクション)を一秒あたり約 3 件さばいていますが、まだ未処理の取引(メモリプール)は約 77,000 件残っています。この記事を書いているなかでも、未処理の取引数は増える一方にみえます。

一方、仮想通貨の XRP は、一秒あたり 1,500 件。仮想通貨ではありませんが、いい比較例として、VISA カードは一秒あたり 3,000 件とも言われています。それらと比べると、ビットコインの一秒あたり 3 件は、雀の涙というのがわかります。

XRP Transation Per Soconds

出典:XRP | Ripple

最近、ビットコインから分裂して生まれたビットコインキャッシュは、ビットコインよりも一定時間内にさばける取引量が多くなっています。ビットコインはひとつのブロックの容量が 1MB だったのに対して、ビットコインキャッシュは 8MB となっています。単純計算で処理できる取引量が 8 倍になっているということです。

※ ブロックは取引を格納する容器のこと。また、ビットコインのブロック容量を大きくしたまま、ビットコインのシステムを維持することは出来ないため、分裂、ブロックチェーンが枝分かれしました。

しかし、8 倍になったとしても仮想通貨 XPR の足元にも及ばないことを見るに、今後もこの分裂騒動は起きそうですね。

ブロックチェーンを維持するための計算量が多く、マイナーにとって魅力的ではない

ブロックチェーンを維持するためには膨大な計算量、つまり電気代が必要となります。その計算量こそが、取引が正常に行われている裏付けとされるからです。英語では、PWF(Proof of Work)と呼んでいます。

この計算量は、実はシステム側である程度、変更することができます。詳しい話は省きますが、システム内の難易度を調整することによって、計算量を上下することができます。

この難易度があまりにも高いとそれを維持する側(マイナー)にとっては採算が取れなくなってしまいます。現在では、電気代の安い場所や、発熱したマシンを自然に冷やせる場所に、マイナーはシステムを置いているぐらいです。

そのため、彼らが維持している仮想通貨よりも、より高収入(つまり、計算量が少なく電気代が安い)な仮想通貨が現れた場合、彼らはその仮想通貨のためにシステムを動かすでしょう。

ビットコインの運営を決定する時、ビットコインのシステム開発者と、彼らマイナーとの間で多数決が行われます。マイナーが報酬によって、支持する仮想通貨を決めるのは想像にかたくないでしょう(分散型システムなのに、多数決とは皮肉なものですね)。

まだまだ成長途中のシステムか、あるいは継ぎ接ぎだらけのシステムか?

ここまでビットコインが分裂する理由を見てきました。自分には、TPS を増やすために頑張る開発者と、実益を重んじるマイナーとの凌ぎ合いという構図に、端から見えます。

現状、ビットコインは「相手に素早く送金する」ということすら難しく、通貨としてまともに使えませんが、取引量を向上させるための仕組みには、まだまだたくさん手があります。Segwit, Segwit2x, Lightning Network などです。

分裂を繰り返して、羽ばたく蝶になれるのか。あるいは分裂を繰り返して、継ぎ接ぎだらけのハウルの動く城になるのか。国に管理されない世界初の通貨がどのような運命を辿るのか、僕たちはその歴史の証人になるでしょう。