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Re: Produce

Reproduce という単語を見るたびに、夏の夕暮れの物悲しさを思い出す。Reproduce には「(子供)を生む」という意味もあるけれど、「繰り返す」という意味もあって、なにか正直に喜べないたぐいの感情が紛れこんでいる。

小学生の頃、校庭で捕まえうる様々な生物を教室の奥で飼育していたけれど、大きく心が揺り動かされるのは決まって、生命の誕生の瞬間だった。そこには、理性でなく野生の感情からこみあげてくるシンプルな誕生の喜びがある。けれど、それが人のことになると、どこか諸手を挙げて喜べないのだ。

それは、答えがないたぐいのものを生まれた子供に押し付けているように思えるからだ。紀元前の哲学者や世界中の宗教で語られる人間の悩みが、現代人の心を震わすように、人の悩みは繰り返されている。自死を選ぶ人が戦争で死ぬ人よりも多い今、悩みは暴力よりも、解決するのが難しそうに見える。

だから、シンプルな誕生の喜びと幸せに生きてねという願いと、罪を押し付けるような背徳感を綯い交ぜにした感情が、人の誕生に対して、僕が素直に思うところだ。

子供は親を選ぶことはできないし、親も子供を選ぶことはできないけれど、避妊が容易になった現代において、親は子供を生むことを選ぶことができる。親のエゴで子供を生むことができる世界において、もし自分がそれを選択し(まずは、パートナーを探すところだが)、子供に「どうして僕を生んだの?」と聞かれたら、真摯に向き合えるような親になりたいと思う。