The device of oblivion and reminiscence

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夢を見る。猫が愛情を込めて爪を立てるような、そんな夢を見る。夢から醒めて現実を認識した時には、風景以外はうまく思い出せない。僕の夢にはいつだって会話というものがなくて、想像の世界をただ一人で旅をしている。狩猟民族だった頃の遺伝子が主張しているのかもしれない。欠伸のせいなのか、心が震えたせいなのか、わからないけれど、涙が伝って枕に染みをつくる。きっとその涙が乾く頃にはもう、その記憶は思いだせなくなるだろう。もしかしたら来るその忘却をあらかじめ悲しんでいるのかもしれない。僕は夢の中でたくさんの旅を重ねる。現実という息苦しい舞台を一日に数時間だけ降りて、もうひとつの心地が良いだけの世界に旅立つのだ。巨大な雲に飲み込まれて崩壊を重ねる都市を歩く。巨大な工場跡地が見える高台からカモメの子育てを眺める。巨木の根がうねり絡みついた崖から大鷲が見下ろすように道を塞いでいる。風化してしまった岩の兵隊が波間に倒れている。いくつもの微粒子を乗り越えて丸みを帯びた光が産毛の存在を認識させる。ほんとうに時々、昔見た夢の内容をもう一度体験することがある。それは神様のくれた慈悲のようなものだと僕は思う。人生に対するささやかな埋め合わせとしての、忘却と追憶のデバイスが夢の機能だ。

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