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「タコの心身問題」を読んだ

タコの心身問題

人間と頭足類(タコやイカ)は、ウジ虫のような単純な神経系を持った生物を共通の出発点としているが、進化の過程でそれぞれ違う経路で心(複雑な神経ネットワーク)を獲得した。

脊索動物に属する動物は、脊索(脊椎)という構造を持っている。ご存知のように、脊索は身体の中央を貫いていて、神経が通り、端には脳がある。これを中央集権的だとすると、頭足類の神経系はそれよりも分散的だと言える。

頭足類は、かつてはステータスを防御力に振った、オウムガイのように殻を持った軟体動物だった。そこから恐竜の時代の少し前に何故か殻を脱ぎ捨てて、ステータスを柔軟性や機動力に振り直し、柔らかく無防備な身体を晒す生き方になった。

どれぐらい柔らかいかというと、タコの硬い部分で最も大きいのが眼球で、眼球よりも大きい穴であれば通り抜けることができる。身体の形はほぼ無限に変えることが出来て、さらに手足の数が多いため、どのように身体をコントロールするかが問題となる。

タコは成約の少ない(=動きの可能性の豊かな)身体をコントロールするために、神経系は他のどの無脊椎動物と比べても大規模に発達した。そのニューロンの多くが腕に集中しており、腕にあるニューロンの数は、合計すると脳の 2 倍近くになる。そのため、腕が身体から切断されても「腕を伸ばしてものを掴む」動作が可能である。

このようなエピソードを筆頭に、本書では、タコのユニークな生態を紹介し、心、進化、知性、意識、色の識別、老化、集団生活といった話を展開している。本書を読んだら、茹でダコを食べるとき「ほとんどタコの心を食べているようなものだな」と思うこと間違いなしである。

タコの心身問題――頭足類から考える意識の起源タコの心身問題――頭足類から考える意識の起源